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外界の認識と意識の変容について
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JUGEMテーマ:自分が読んだ本

 

うだるような暑さの日々が続いていますが

皆様いかがお過ごしでしょうか。

こちらも溶けそうです。

土日に外出する気になれません。

死ぬ。

 

さて本日は星雲賞の発表ということでSF界隈は賑わっております。

去年話題になった「けものフレンズ」のアニメ監督である

たつき監督も受賞されたそうですね。

 

どっかに今年の受賞者一覧ないかなーと思ったんですが

SF好きの集まりによるものとは思えぬ情報速度の重さで

リアルタイム情報どころか受賞式も終わった現時点でさえ

公式HPが投票ページのままという状況ですはい。

日本じゃ一番有名なSFの賞なんですけどね。

なんかゆるいのよね。

SFだからね。しかたないね。

 

前置きが長くなりましたが

日本では星雲賞を、海外ではヒューゴー賞やローカス賞など有名どころの賞を

過去になんども受賞したこともある著者の作品群を収録したのが

今回読んだこの本でございます。

 

あなたの人生の物語

テッド・チャン著

浅倉久志・他訳

ハヤカワ文庫

 

……ばかうk

 

この本は短編集なのですが、

本の表題にもなった「あなたの人生の物語」は

「メッセージ」というタイトルで映画化もされました。

でその時のポスターがこの表紙なのですが、

何をどうやっても日本人には駄菓子「ばかうけ」にしか見えないと

本編とは関係ないところで話題になってました。

 

実際、本編どうだったんですかね?

普段映画見ない人でこれも例外ではなく見ていないのですが、

大ヒット!って噂は聞かなかったのでそこそこだったのかな?

でもこれどうやって映像化したのは気になるぞ。

何せ劇的なオチもないし……主人公の内面イメージのお話が半分くらいだし……

映像としてはすごく地味なのでは……

 

 

話を戻しましょう。

 

収録タイトルとしては以下の通り。

 

・バビロンの塔

・理解

・ゼロで割る

・あなたの人生の物語

・七十二文字

・人類科学(ヒューマンサイエンス)の進化

・地獄とは神の不在なり

・顔の美醜について-ドキュメンタリー

・作品覚え書き

 

最後のは各小説のアイデアがどこから出てきたのかという解説ですので

物語としては8つです。

個人的に好きだったのは

「バビロンの塔」「あなたの〜」「七十二文字」「顔の美醜について」

あたりでしょうか。

いや全部よかったんですけどね。

あえてあげるなら!ですよ。

 

ちうことで以下多大なるネタバレ。

 

 

「バビロンの塔」

聞いてイメージされる通り天へと届く塔を建設するお話。

元ネタの聖書では「不届きものが!」と怒った神様が人類に怒りの鉄槌を食らわし

それによって世界には多種多様な言語が生まれて工事続行が不可能に。

人類は同じ言語を話すもの同士でまとまってバラバラに暮らすようになりましたとさ、

というお話ですが、この本ではなんと「無事天に到達する」。

 

我々が住む世界は地上からひたすら登っていけば

宇宙空間へと突き抜けるしかないわけですが

この話の中では空に「天井がある」。

まさに古代人がイメージしていた「宇宙」のまんまで、

太陽の軌道や星の軌道を超えると「天の丸天井」にあたるというわけです。

塔のてっぺんでは太陽が下から照りつけるよ。

当然地上から天まではめちゃくちゃ遠いので、

石材を上まで運ぶために塔の途中に拠点となる集落があります。

 

これだけでもすげえなおい!

 

主人公が下から上まで登っていく過程も面白いのですが、

塔の上でなんと「天井をぶち抜き出す」。

というかそのために来たのが主人公たちであって、物語の山場がやってきます。

不条理で情け容赦ない、それでも心躍る結末が私は好きです。

 

こういう聖書の世界がそのまま現実になった世界というか

聖書的な世界は「地獄とは〜」もそうで、あちらは天使が出てきます。

奇跡であると同時に災害でもある天使が。

 

 

「あなたの人生の物語」

人間は言語によって思考回路を強く固定されている。

言語は思考であるし、逆もあるのですが、

少なくとも我々の使う言語にも思考にも時間の矢が存在します。

因果律。

原因があって、結果がある。

日常の観測から得られる感触。

 

一方で物理の世界ではこの因果律で動いていないように見える世界があります。

「最短経路を選んで進む」というやつ。

本編中では光の屈折について「フェルマーの最短経路の原理」が例示されていて、

物理の教科書の中では「最小作用の原理」とか「変分原理」とかその辺のお話なのですが、

因果律の観点から見るとどうにも腑に落ちない原理なのです。

まるで出発前から着陸地点と最適経路がわかっているかのような。

しかしこれもまた物理学の原理であり、

因果律的な物の見方とどちらが正しいということもなく、

要は捉え方だけの問題です。

 

というのがこのお話。

 

ヘプタポットという7本足のエイリアンが地球にやってきて

しかし何をするわけでもなくその場で(モノリスの中で)じっとしている。

彼らとコミュニケーションを取るべく派遣されたのが主人公。

言語学が専門。

主人公はヘプタポットから彼らの言語を教わるわけですが

どうにも人類の言語とはまるで違うものであることがわかってくる。

おまけに話し言葉と書き言葉が全く対応しない。

 

あれこれ解析を進めるうちにヘプタポットが因果律ではなく

最小原理に従って思考し、文字を書いていることが判明します。

文法に従って順に書いていくのではなく、

全体の形が最初から決まっている文字。

そもそも「最初」だの「最後」だのがなく、

ただ現在があるという、「意志(という概念)のない」行動。

ヘプタポッドの言葉は、言語は決定ではなく実行のためにあります。

いやだって全部決まってんだし?わかってるし見えてるし?

 

そんな思考回路を持つヘプタポットの文字の習得を進めるうちに

主人公の思考回路にも変化が現れます。

完全にヘプタポット式の感覚になるところまではいかないので

人間式との界でぼんやりした感じです。

 

娘との対話形式で進む不思議な語りが見事にはまっている、

どことなく夢を見ているようなお話でした。

 

ヘプタポット何もせずに帰るしな!!

なんだったんだよぅ君たちぃ!!

 

 

「七十二文字」

ゴーレムとヒトのお話。

オカルティックだけれど、オカルトが科学として成立している世界です。

ゴーレムはプログラムで動くロボットのようなものなのですが、

このプログラムに該当するのが七十二文字の「名辞」。

この名辞がまるで魔法の呪文。

プログラムはそもそもが人間が作ったものですが

名辞は結構手探りでの「探し出す/探り当てる」研究が必要です。

主人公は優秀な名辞研究者。

 

このお話の鍵は2つ。

1つ目は、名辞によるゴーレム操作は熱力学的に周りの熱を食う方向へ働くらしく、

ゴーレムが働いている場所はひんやりすること。

ここで立ち上がってくるのが「言葉による秩序の形成」。

2つ目は「動物が強烈な前成説でもって生まれてくること」。

人間ももちろん例外ではなく、精子にすでに「小さな人間の雛形が入っている」世界。

ホムンクルス的なアレです。

 

ここへ「人間があと5世代しか持たない」という超機密研究結果が報告されます。

 

技術と倫理がぶつかりよじれる最前線のお話。

 

 

「顔の美醜について」

人は誰しも能力に基づいて扱われるべきであり、

外見というファクターは極力排除されるべきである、か?

美しいという感覚はいかに扱われるべきか?

という日本でも現在進行形で紛糾しそうな話題を元に展開するお話。

 

この世界では”カリー”、美醜失認処置(カリーアグノシア)によって

人の顔はできるけれどその美醜を判断する回路を

可逆的に切ることが出来る技術が誕生しました。
主人公は幼い頃に両親にカリーを施された女性で、

カリーを受けた子供達のみが入学できる学校で高校までを過ごし、

「18になったら好きにしろ」と言われてカリーを外してみようかと思ってるところ。

そしたら在学している大学の学生会が

学生に対してカリーを受けることを義務付ける運動を展開していて、

主人公は「冗談じゃない」と反発する。

 

企業の広告ー特に化粧品業界-によって過剰に美しいことが重要とされることへの反発。

美醜ではなく内面で人の評価が決まることへの肯定感。

一方で親が子に対して処置を行うことは適切であるかという疑問。

美術的な「美」の創造ができなくなることへの懸念。

イケメン美人であることも個性の一部であるという主張。

一人の異性の気を引く手立てとしては?

カリーは目隠しか、それとも美醜を感じることこそ目隠しなのか?

カリーを受ければ外見のコンプレックスはなくなる。

しかしカリーを受けていない人間にどう思われているかが、わからなくなる。

 

人間はどうしようにもなく社会を形成していて、

美醜は他者からの評価であり、

主人公のいうとおり、

美しさは魔法のようなものだ。

視線を否応なしに惹きつけ、幸せな気持ちにもなる。

なんていうか、

人間ままならんものよのぅ……という感じの読後感でした。

 

 

長い!!!!

全部書いてないのに長い!!!

まとめるの下手ですみません!!!

 

いやどれも読み応えのある仕掛けがたくさんなので

ぜひ読んでくださいませ。

 

 

posted by RAN | 22:25 | 本・雑誌 | comments(0) | trackbacks(0) |
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